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「対話と実行」を、会議録4年ぶんで数えてみた

米沢市長が繰り返し掲げている言葉が「対話と実行」です。では、対話はどれくらい行われたのか。会議録を4年ぶん数えると、この市長は前の市長のおよそ3倍、議場で自分の言葉で答えていました。その一方で、新年度の予算をいったん撤回し、条例の議案は賛成少数で否決されています。どちらも同じ3年の話です。

2026年7月3日読むのに14分くらい数字は2026年7月3日時点

「市長は現場によく行っているらしい」「でも議会とはうまくいっていないらしい」。 どちらもよく聞く言い方です。

感覚で言い合っても仕方がないので、会議録を4年ぶん(16会期)まるごと数えてみました。 数えられるものは数え、数えられないものは「数えられない」と書きます。

1|まず、市長自身は何と言っているか

よく「現場主義」という言葉で語られます。ただ、会議録の中で「現場主義」と言っているのは市長ではありませんでした。 4年ぶんで2回出てきますが、どちらも議員の発言です。

市長自身が繰り返し使っているのは、別の言葉でした。

市長が繰り返している言葉

  • 対話と実行

    「市長としての私の行動の基軸であります」(令和7年3月)

    令和8年度の市政運営方針でも「原点である『対話と実行』」と述べています

  • 現地現物が第一

    就任後、職員に伝えた2つのお願いのうちの1つ目に出てきます。

    「調査なくして政策なし」と続きます(令和6年3月)

  • 強さ・機敏さ・優しさ

    令和8年度の市政運営方針で、行政に必要なものとして挙げた3つ。

    「過去の慣例や方針に固執・拘泥することなく」とあります

就任した年から令和8年度まで、市政運営方針や答弁のたびに出てきます。出典:米沢市議会 会議録(令和6年3月/令和7年3月/令和8年3月定例会)

就任して最初の3月定例会で、市長は職員に2つのお願いをしたと述べています。

1つ目は、これまで以上に市民の皆さんとの対話を重ねてほしいということ。 さらには他の行政機関などと連携をして情報の収集に当たってほしいということ、 現地現物が第一、調査なくして政策なしだからであります。 2つ目は、改善の提案と実行であります。

つまり「現場に行く」は、市長が職員に求めたことでもあります。 自分だけの話ではなく、組織の方針として言っている、ということになります。

2|対話が形になった例は、確かにあります

言葉だけなら誰でも言えるので、対話のあとで実際に何かが変わった例を探しました。 会議録の中で、市長自身が経緯を説明しているものが3つ見つかりました。

対話のあとで、実際に変わったもの

  • コミセンの使用料

    趣味のサークルなどの使用料を「50%減額に統一」とした方針を、意見交換会のあとで「100%減免に統一」へ変えました。

    4か所で説明会。「それでもなお、という御意見が数多く聞かれた」(令和6年9月)

  • 除雪オペレーター

    事業者との意見交換会に市長自身が参加し、高齢化・人材不足の声を受けて育成支援の補助率拡充の検討に入りました。

    令和6年12月

  • 栗子山の風力発電

    市民との対話や事業者との意見交換をふまえ、事業者に事業の撤回を申し入れました。

    「対話と実行が私の信条であります」と述べたうえでの判断(令和6年9月)

いずれも市長が議場で経緯を説明したものです。ほかにもある可能性はありますが、会議録から確かめられたのはこの3件でした。出典:米沢市議会 会議録(令和6年9月/令和6年12月定例会)

1つ目は、方針が変わる過程が会議録に細かく残っています。市はいったん 「100%と50%が混ざっている減免を、50%に統一する」という案を出しました。 反対の声を受けて4か所で説明会を開き、いきなり変えずに段階的にする案(激変緩和措置)も示したうえで意見を聞き、それでも反対が多かったので、逆方向の「100%減免に統一」へ変えた—— という流れです。実施は令和7年4月からでした。

3つ目はとくに分かりやすい例です。市長は撤回を申し入れた理由を説明する場面で、「対話と実行が私の信条であります」と述べたうえで、 市民との対話・事業者との意見交換・県の見解を「総合的に検討し」て判断したと言っています。

3|数えてみる:市長が議場で自分の言葉で答えた量

ここからが本題です。「対話」は数えられるのか。

市民との対話は数えようがありません。座談会に何人来たかも公開されていません。 でも議場での対話なら数えられます。 会議録には誰が何を言ったかが全部残っているからです。

そこで、市長本人の発言が、その会期の会議録全体に占める割合を計算しました。 市長が自分で答えているのか、部長に任せているのかが、これで見えます。

1会期あたり、市長は何回・どれだけ話しているか

中川市長(〜令和5年)近藤市長(令和6年〜)
数えた会期6会期6会期
1会期あたりの発言回数8.2回26.8回
会議録に占める市長発言の割合2.69%7.52%
(参考)3月定例会だけ7.40%14.87%
3月定例会は市長が市政運営方針を読み上げるので、どの市長でも数字が跳ね上がります。比べるときは3月を除いたほうが実態に近くなります。出典:米沢市議会 会議録(令和4年6月〜令和8年3月定例会の16会期)を集計

3月定例会を除いた6会期どうしで比べると

発言の回数
3.3倍
会議録に占める割合
2.8倍
どちらも6会期ぶんです。中川市長は令和4年6月〜令和5年12月、近藤市長は令和6年6月〜令和7年12月。出典:同上

4|ところが、いちばん大事な場面で折り合いませんでした

よく話す。現場にも行く。それでも令和8年の3月と6月に、続けて2つのことが起きています。

令和8年3月〜6月に起きたこと

  1. 令和8年3月19日

    予算特別委員会が、新年度の一般会計予算を「否決すべき」と判断

    東成中学校の開校に必要な費用が入っていなかったことが理由

  2. 同日

    市長が予算を撤回

    議第25号の撤回が本会議で承認されました

  3. 同日

    1億2,000万円を足して、議第41号として再提出

    予算総額465億9,000万円。財源は地方債と財政調整基金の繰入金

  4. 令和8年3月24日

    再提出された予算が可決(賛成多数)

    同じ日に、議会は開校延期の方針に関する決議も可決しています

  5. 令和8年6月18日

    開校時期を変える条例の議案(議第50号)が否決

    委員会・本会議とも「賛成少数」。市長提出議案としては異例です

どちらも東成中学校の開校時期をめぐるものです。経緯そのものは別の記事にまとめました。出典:米沢市議会 会議録(令和8年3月定例会)/米沢市議会「議案と議決結果」(令和8年3月定例会・6月定例会)

新年度の当初予算を出し直すというのは、そう起きることではありません。 今回そろえた会議録4年ぶん(令和4年6月〜令和8年3月)を見ても、市長が出した議案を撤回したのは、この1件だけでした。

この一連の経緯そのものは、東成中学校の記事に時系列で並べてあります。ここでは「合意の取り方」の話としてだけ扱います。

5|市長自身が、そこをどう言ったか

令和8年3月定例会の閉会あいさつで、市長はこう述べています。

市議会の議決の重みは以前より重々認識しているところでございますが、今回の経験を重く受け止め、 今後はより一層議員の皆様との丁寧な対話と調整を心がけ、市民の皆様のための市政運営に邁進してまいります。

課題があったと言っているのは、外野ではなく市長本人です。 「より一層」「丁寧な対話と調整」という言い方は、 それまでの調整が十分ではなかったと認めたものと読むのが自然だと思います。

6|組織のほう:副市長が1年1か月いませんでした

チームの話も見ておきます。ここはいちばんはっきりした事実が残っています。

副市長・教育長が決まるまで

  1. 2023年12月22日

    市長就任

    副市長・教育長ともに不在の状態でのスタート

  2. 2024年3月

    議会が「副市長と教育長の人事はどう考えているか」と質問

    市長は「現在不在であることには憂慮している」と答弁

  3. 2024年4月

    教育長が就任

    空席はおよそ3か月半

  4. 2024年6月

    議会が再び質問

    市長は「部長級の幹部職員に副市長のつもりで目配りしてほしいと申し上げている」と答弁

  5. 2024年9月

    議会が3回目の質問

    「ここ数十年の歴代市長を見ても、ここまで人選に時間がかかった方がおられた記憶は私の記憶にはございません」

  6. 2025年2月3日

    臨時会で副市長の選任に議会が同意

    就任からおよそ1年1か月。同意は全会一致でした

副市長は市長を補佐して、政策や企画について各部を指揮監督する特別職です。議会の同意が必要です。出典:米沢市議会 会議録(令和6年3月・6月・9月・12月定例会)/米沢市議会「令和7年2月臨時会の議案と議決結果」
市長は、不在の理由をどう説明していたか「不在でよいとは考えていない」としつつ、人選の条件を挙げていました。

市長は令和6年3月定例会で、人選の条件をこう説明しています。 「人格が何より高潔で、優れた見識や豊富な経験を有することはもとより、 私の目指す『好循環の米沢』に共感を持ち、同じ方向を見ながら、その実現に向けて持てる力を惜しみなく発揮し」 ていただける方を念頭に置いている、という趣旨です。

令和6年6月には、地方自治法第161条で副市長を条例で置かないこともできると説明したうえで、「私としては不在でよいとは考えておりません」と述べています。 同じ答弁で「4月に就任された佐藤教育長をはじめ、幸い優れた部長、課長に力を発揮していただいており、 支えていただいておりますので、副市長不在の現在であっても、従前と比べて市政が停滞しているということはない」 とも述べました。

つまり、置かない方針だったわけではなく、人選に時間がかかっていた、というのが 市長側の説明です。実際に決まるまでの間、議会は3回続けてこの点を質しています。

7|一方で、組織については自分から手も打っています

ここも片側だけで終わらせないために書いておきます。組織の課題を自分で挙げて、動かしている場面も会議録に残っています。

組織について、市長が議場で述べたこと

  1. 令和6年3月

    「縦割りにこだわることなく」連携すべきだと答弁

    学校は教育委員会、学童保育は健康福祉部という縦割りを、市長が自分から例に挙げました。会議録で追えるのは方針の表明までです。

  2. 令和7年3月

    「風通しのよい組織」にしなければならないと答弁

    職員が心身ともにやりがいを持てることが市民サービスにつながる、という趣旨。ここも表明までです。

  3. 令和7年12月

    観光・文化・スポーツに「横串を通す」体制をつくると説明

    令和8年4月に「観光文化スポーツ部」を新設。表明が形になった例です。

いずれも市長本人の答弁です。実際にどこまで効いたかは、この記事では確かめられていません。出典:米沢市議会 会議録(令和6年3月/令和7年3月/令和7年12月定例会)

逆に、まだ動いていないものもあります。 勤務成績を給与などの処遇に反映させる仕組みについて、令和7年12月に総務部長は 「導入の必要性は強く認識している」としつつ、 評価のばらつきや不公平感などの課題があるため「解決した上で……検討を進めてまいります」と答えています。

8|確かめられたことと、確かめられなかったこと

いちばん大事なところです。今回できたことと、できなかったことを分けます。

この記事で、どこまで確かめられたか

  • 市長は議場でよく話しているか

    確かめられました。前の市長のおよそ3倍です。

    会議録16会期ぶんを集計

  • 対話のあとで方針が変わった例はあるか

    確かめられました。3件ありました。

    市長が議場で経緯を説明したもの

  • 市長の議案が押し戻されたことはあるか

    確かめられました。撤回が1件、否決が1件です。

    令和8年3月・6月

  • 副市長の不在はどれくらいだったか

    確かめられました。およそ1年1か月です。

    就任から選任同意まで

  • 庁内の意思疎通は実際どうなのか

    確かめられませんでした。庁議は公開されていません。

    会議録に出てくるのは議場でのやりとりだけ

  • 職員がどう感じているか

    確かめられませんでした。職員に聞いた調査の公表が見つかりません。

  • 職員の離職が増えているか

    確かめられませんでした。議場で「増加傾向とお聞きしている」という発言はありますが、数字は出ていません。

  • 前の市長と議案の通り方を比べられるか

    確かめられませんでした。賛否の一覧が公表されているのは令和6年3月以降ぶんだけです。

「確かめられなかった」は「無かった」という意味ではありません。公開資料では追えなかった、という意味です。

9|ここからできること

ここからできること

この記事で使った資料は、全部そのまま誰でも開けます。自分で確かめたい人向けに、手間の軽い順に並べました。

10|市の側には、どんな打ち手があるのか

市民にできることだけを並べると、できる範囲が小さいぶん、あきらめで終わってしまいます。市の側で実際に提案された、あるいは答弁された打ち手も並べます。 書き手の思いつきは入れていません。

  • すでに実施

    副市長を置く

    市長を補佐し、各部を指揮監督する特別職です。1年1か月の空席のあと、令和7年2月に議会が選任に同意しました。

    出どころ:令和6年3月・6月・9月定例会(一般質問・代表質問)

    やりとり:「不在でよいとは考えておりません」(市長答弁)。令和7年2月3日の臨時会で全会一致で同意。

  • すでに実施

    部を再編して、横串を通す

    観光・文化・スポーツをひとつの部にまとめ、機動的に動ける体制にする、という考え方です。

    出どころ:令和7年12月定例会(市長答弁)

    やりとり:令和8年4月に「観光文化スポーツ部」を新設。市政運営方針にも明記されています。

  • 市が検討中と答弁

    勤務成績を処遇に反映させる

    がんばった職員が報われる仕組みです。部署ごとに業務が違うので評価がばらつく、という課題が挙げられています。

    出どころ:令和7年12月定例会(一般質問)

    やりとり:「導入の必要性は強く認識」しつつ、課題を解決した上で検討を進める、という総務部長答弁。

  • よその自治体の例

    包括予算制度を入れる

    一般財源を各部に配分し、部長のマネジメントで自主的に予算を組む方式です。予算の決裁権をある程度現場に任せる形になります。

    出どころ:令和6年3月定例会(一般質問)。鎌倉市の例が紹介されました

    やりとり:鎌倉市はこの制度を「徹底した現場主義、顧客主義の下で」の柔軟な予算編成と説明しています。

  • 議会で提案あり

    議会との調整を、議案を出す前にやる

    条例で決まっていることを変えるときに、先に議会と話をつけておく、という一番地味な打ち手です。

    出どころ:令和8年3月定例会 閉会あいさつ

    やりとり:「今後はより一層議員の皆様との丁寧な対話と調整を心がけ」(市長)。実際にどうなるかは、これからの会期で見ることになります。

この記事が見たもの出典 7 件。ここに書いた事実は、すべてこの資料から取っています
  1. 1.米沢市議会 会議録検索この記事の集計はすべてここから。令和4年6月定例会〜令和8年3月定例会の16会期ぶんを使いました。
  2. 2.米沢市議会「定例会・臨時会の議案と議決結果」議案ごとの委員会審査結果と本会議の議決結果。全会一致かどうかもここに書かれています。
  3. 3.米沢市議会「令和8年6月定例会の議案等と議決結果」議第50号(東成中学校を設置する時期を変更するもの)の否決と、ほかの議案がすべて全会一致だったこと。
  4. 4.米沢市議会「令和8年3月定例会の議案等と議決結果」議第41号(465億9,000万円)の予算特別委員会・本会議の結果。撤回された議第25号はこのページには載りません。
  5. 5.米沢市議会「令和7年2月臨時会の議案と議決結果」議第1号「米沢市副市長の選任について」が2月3日に同意されたこと。
  6. 6.米沢市「令和8年度市政運営方針」「原点である『対話と実行』」「強さ・機敏さ・優しさ」。3月定例会の冒頭で表明されたものです。
  7. 7.近藤洋介 公式サイト公約。「現場を訪ね、対話し、課題の解決につなげる」という記述があります。

リンク先は米沢市など、それぞれの発行元の公式ページです。 このノートの書き方に納得がいかないときほど、こちらを直接見てみてください。

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